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靴の絵画(アート)を見る②-「VINCENT VAN GOGH ゴッホ展(1985年)」作品集(書籍)より絵画「ひまわり」、「種をまく人」、「夜のカフェテラス」などの作品で有名なゴッホ(フィンセント・ファン・ゴッホ/Vincent van Gogh)ですが、意外にも「靴」をモチーフにした作品もいくつか残されています。 1985年10月12日~12月8日、国立西洋美術館で開催された「ゴッホ展」の作品集。(1985年 東京新聞社 発行) ■同書に納められている靴をモチーフにした作品 「古靴」(アルル 1888年8月)油彩、キャンバス 同年8月29日の手紙に「古靴を描いた静物画」と述べられている。 「ブーツ(a pair of boots)」(1887年) 以下、書籍より抜粋 ” 古靴 アルル 1888年8月 油彩、カンヴァス 44×53cm アメリカ合衆国、個人蔵 ゴッホの静物画に見られる特異なモティーフのひとつとして、靴がある。彼はパリ時代に、靴の静物画を5点描き-「ブーツ」「三足のブーツ」ー、アルルでも2点の靴の絵ー本作品(「古靴」)と「木靴」ーを描いている。 何故ゴッホがそれほどしばしば靴を描いたかという問いに対しては、多くの答えがこれまでに出されているー靴はゴッホの人生の旅、放浪の象徴である;ゴッホは歩くのが好きな男で、靴は最も重要な同伴者であった;「一対」の靴は共に歩むフィンセントとテオを表している;このような粗野な汚らしいものを静物画の主題として取り上げることは、伝統的な趣味に対する挑戦である。 本作品(「古靴」)は、8月29日の手紙に「古靴を描いた静物画」と述べられ、10月3日の手紙に「農夫の古いブーツを描いた静物画」と述べられているものにあたると考えられる。ゴッホのアルルの家の赤いタイルの床の上に置かれたこの靴は、ピックヴァンスの指摘するように、ゴッホが8月にその肖像画を描いた農夫、パシャーンス・エスカリエの靴であるかもしれない。この場合、農夫の古靴は、長く苦しい農夫の仕事に対する同情と賛美の表現と解釈することができよう。” ■靴以外の作品 以下は、靴以外の作品ですが、足元を見ると靴は丁寧に描かれています。 形状やデザイン、色合いなど、靴に思い入れのあるゴッホならではのタッチで描かれています。 「Worn Out:At Eternity's Gate/疲れ果てて:永遠の入り口にて」(サンレミ 1890年)油彩、カンヴァス 足元の革靴。 ソールとヒールの形状が力強い輪郭で描かれている。 色合いや甲革のシワの感じも趣がある。 「パイプを持つ漁師」(ハーグ 1883年 7月)ペン、鉛筆、黒チョーク、白のハイライト ゴッホの「漁師」を表した素描は6点知られている。そのうちの一点。 漁師の足元の靴。 ブーツタイプの編み上げシューズ。 シルエットと甲革のシワ感がしっかり描かれている。 「暖炉のかたわらの農夫」(エッテン 1881年11月)木炭、淡彩、白と赤のハイライト 農夫の足元の靴。 スリッパのようなスリップオンタイプのシューズ。木靴だろうか。 靴を立体に描くのはけっこう難しいと思うのだが、正確にしっかり描かれている。 「地面を掘る男」(ハーグ 1882年11月)鉛筆、インク 力強いタッチで描かれた輪郭、足元の角張った形の靴(木靴?)も興味深い。 「種播く人(ミレーによる)」(エッテン 1881年4月)ペン、淡彩、緑と白のハイライト 『種播く人』はゴッホが最も好んだモチーフのひとつで、生涯を通じてしばしば描かれている。 農夫の足元の靴(ブーツ)。 膝下まで筒のあるブーツ。しなやかに足にフィットしている。 「種播く人」(バーグ 1882年)鉛筆、筆、インク、白のハイライト 農夫の足元の靴。 ブーツタイプの革靴のように見える。 デザイン、甲革のシワ感、影など細部にわたって丁寧に描かれている。 「畑を掘る二人の農婦」(ヌエネン 1885年 7-8月)水彩 1885年ゴッホは、畑を耕したり掘ったりする男女の農民を多く描いた。 この絵画の農婦は馬鈴薯を掘っていると思われる。 農婦の足元の靴。 スリッポンのようなかたちのシューズ。木靴のように角張っている。 「畑を掘る農婦」(ヌエネン 1885年 7-8月)油絵、カンヴァス(板に張り付け) 農婦の足元の靴。 光と影を色彩で立体的に描かれている。 「Peasant Women Planting Beets/甜菜を植える農婦」(ヌエネン 1885年)黒チョーク 農婦の足元の靴。 力強いタッチで描かれた輪郭の靴。 「刈入れする農夫」(ヌエネン 1885年8月)鉛筆、チョーク、筆、褐色のインク 小麦の刈入れをする農夫を描いた作品。 農夫の足元の靴。 作品の表情にマッチしたタッチで描かれている。 【感想】 ゴッホは、誰でも知っているとても有名な画家ですが、靴をモチーフにした作品があるとは筆者は知りませんでした。しかも、ゴッホ自身が靴への思い入れがあり、靴を通じて表現したい何かがあったことにも驚きました。描かれた靴は、細部にわたって丁寧そして正確に描かれており、絵の裏にある物語を感じることができます。 ゴッホが当時どんな気持ちで、このような絵画を描いたのか、思いを巡らせると感銘深いものがあります。 ▼アマゾンで「ゴッホ展(1985年)」を購入する▼ (文・写真/shoepara編集部 大嶋信之) 【関連記事:靴と足の絵画(アート)を見る-「ERTE(1995年/Jean Tibbetts)」、「ボロフスキー展(1987年)」作品集(書籍)より 】 |