2020.02.20(木)
shoepara編集部 大嶋信之
2020年2月13日(木)、伊豆半島(静岡県伊東市川奈)で草木染めを行う「ひかり工房」さんを訪れました。
ひかり工房の代表、生田一夫(法諱:一舟)さんは、臨済宗僧侶として臨済宗 伊豆小室山禅堂を開いた方で、知的障害のある子供たちを支援する施設「一般社団法人ひかり」の代表理事でもあります。
そんな生田さんが手がけている草木染めレザーは、伊豆天城で獣害駆除によって捕獲された鹿の革を、ひかり工房のある川奈で獲れる草木花などの植物を染料として染め上げた、すべての工程を自然の恵みだけで仕上げた革となっています。
ひかり工房さんは、昨年(2019年)12月に東京・台東区で行われた「第101回 TLF 東京レザーフェア」に、草木染めレザーを出展されました。
ひかり工房
静岡県伊東市川奈1261-37
http://hikarikobo.html.xdomain.jp/
インスタグラム「ひかりいろ」
https://www.instagram.com/issyu_ikuta/
「しろなめし+草木染め」
革となった鹿を捕った場所、天城山で撮った写真。
発色鮮やかな、色とりどりの革。
伊豆新聞(2020年1月24日)に掲載された記事。
『天城高原で捕獲 鹿の革活用-「白なめし加工」で草木染め』
川奈「ひかり工房」が新製品
伊豆地区の獣害駆除に着目「繊細で柔らか”超高級品”」
ひかり工房に到着。
今回の訪問は、シューフィルC&Cネットワーク代表の城(たち)さんの声掛けにより、国内各地で靴づくりを営むクリエイターなど合計10名で訪問させていただきました。
まずは施設のスタッフの方との名刺交換、自己紹介、草木染めの説明、意見交換などを行いました。
■今回参加したクリエイター(靴デザイナー、靴職人)
曽田耕さん(東京・墨田区/SODA STUDIO)
野島孝介さん(京都市/吉靴房)
アライタカフミさん(東京都/TAKAFUMI ARAI)
千坂実木さん(兵庫県・神戸/靴づくり屋 chisaka)
染料の説明をする生田さん。
ひかり工房では、以前から繊維の草木染めは行っていて、手づくりでマスクやソックスなどを製作販売している。
また、アパレルメーカーから衣服の染色(後染め)を依頼されることもあるという。
草木染めに使用される主な植物。
写真上から右回りで、
やまもも
つるばみ(どんぐり)
蓼藍(たであい)
矢車付子(やしゃぶし)
梅の木苔(うめのきごけ)
枇杷(びわ)
やまももは黄色に、矢車付子(やしゃぶし)は黒に、つるばみ(どんぐり)は綺麗な茶色、枇杷(びわ)は赤茶に染まるという。
枇杷の葉には消炎効果があるとされる。
やまももで染めた、黄色のマスク。
草木染めのマスク各色。
洗って繰り返し使え、それぞれの植物のもつ効能も期待できるのではないかとのこと。
草木染めの足袋ソックス各色。
草木染めした毛糸。
マフラーやニット帽などが作れる。
草木染め(後染め)した洋服。
それぞれの植物から抽出した染料。
染料として使用する植物は、栽培と近くの野山より採取してすべて自前で調達している。
染料として使う樹皮を採っている様子。
施設にあるお風呂場のひとつは、大きいものを染める染色場として使用している。
染め上げる前の革(鹿革)。
白鞣しという、1000年以上の歴史のある化学薬品を使わない鞣し方法で、国内(兵庫・姫路)でつくられた皮革だ。
草木染めされたレザー。
先ほどの真っ白な革が、こんなにも見事に染め上がることに驚きました。
生田さんは、様々な鞣し革と染め方を試行錯誤して、国内の白鞣しと特定の草木染めにたどり着いたという。
色とりどりのレザーが並ぶ。
風合いある自然な仕上がりとなっている。
鹿一頭で、75~90デジだそうだ。(1デジ=10平方センチ)
鮮やかな黄色のレザー。
ゴムなどで縛って染める藍染などでも使われる手法で染めた模様のある革。
草木染めならではの色模様だ。
実際に手に取る参加者たち。
鹿の柔らかな質感と、草木で染めた風合いが、他の革にはない魅力を感じました。
色の異なる2枚の革を、編み込んで模様を作ったレザー。
これを使った革製品を企画中とのこと。
工房の外へ案内してもらった。
庭にある炉。灰を染料として使用する。
工房近くには、小室山(こむろやま)という標高312mの山があり、週末は観光客で賑わう。
山頂までリフトで登ることができ、富士山と相模湾を見渡すことができる。
訪問日は、強風のためリフトが早く終わってしまい、登ることができなかった、残念。
小室山のふもとは、小室山公園という整備された土地で、花の名所と言われる綺麗な草木が生い茂っている。
染料に使う植物のひとつ、梅の木苔(ウメノキゴケ)を探す方法を教わった。
写真中央は「梅の木苔(ウメノキゴケ)」。
周りに生えているのは、似ているが「マツゲゴケ」という違う種類だ。
よく見ると、端の形状が異なる。
ウメノキゴケは丸く滑らかなのに対し、マツゲゴケはまつ毛のように突起のある形状になっている。
マツゲゴケでは、染色が違ってしまうため、よく見ないと間違えてしまう。
こちらは梅の木苔(ウメノキゴケ)。
雨上がりなどで湿っている状態だと取れやすいそうだ。
訪問日は天気も良く、実に眺めが良かった。
富士山も大きくしっかり見える。
梅が少し咲き始めた感じ。
見どころのある風情のある公園でした。
目を引いた参加クリエイターの一人、アライタカフミさんのハンドメイドアクセサリー。
カラフルな革製タッセルとキルト。スニーカーにアクセントが個性的で素敵★
【ひかり工房さんを訪れてみて】
伊豆で獣害として獲られた鹿を、国内の伝統的な手法で鞣し、伊豆の草木で染めた、純国産レザーに可能性を感じました。
鞣し方法も天然かつ歴史があり、循環性の高い皮革なので、うまく製品になるといいなと思いました。
また、海と山と自然に恵まれた伊豆半島での、草木染めのロケーションが最高でした。
今後、この革がどんな製品に生まれ変わるか期待しています。
(文・写真/shoepara編集部 大嶋信之)