筆者の祖父は靴職人だったのですが、当時祖父が靴づくりに使用していた靴工具のワニ(ピンサーペンチ、ラスティング・ピンサー)をご紹介いたします。
40年以上前のもので、日本製になります。
現在は海外製(中国製や台湾製)のものがほとんどで、日本製はほぼ手に入らないと聞きました。
やはり日本製は固く丈夫で壊れないのだそうです。
ペンチ部分の形状が、ワニの口のようなことから、ほとんどの靴職人は「ワニ」と呼んでいます。
ワニは主に、製靴時の甲革を木型につり込む時に使います。
つり込み(ラスティング)の工具から「ラスティングピンサー」、「ピンサーペンチ」などと呼ばれることもあります。
素材は鉄製で、全長20.0cm、重量300gと、手に取るとけっこうズッシリきます。(日本製は外国製に比べ重いです。)
靴製造のセントラル靴で靴職人をされていた有馬さんに伺ったところ、このサイズは、「小ワニ(しょうわに)」という小さなサイズだそうで、大きくなるにつれ、「中ワニ(ちゅうわに)」、「大ワニ(だいわに)」と呼ぶそうです。
また、ハンドル根元の横に「東京」と刻印が確認できます。
有馬さんによると、日本製のワニで「東京KD」と刻印されたものは、(株)小島台助製、「大谷」と刻印があるものは(株)大谷商店製なのだそうです。写真のものは、「東京」と刻印はありますが「DK」は確認できませんでした。
先端のペンチ部分で甲革(アッパー)を挟んで引っ張りながら、木型の形に合わせてつり込んでいきます。
ハンドル部分。
片方のハンドル先端からハンドル先端まで、最大15cmと大きく開きます。
先端のペンチ部分。
先端にかけて細くとんがった形状になっていて、しっかり革をつまめるようにギザギザの凹凸がついています。
ペンチの開いた表情が、まるで恐竜の口や、ワニの口のようです。この形状が「ワニ」と呼ばれる所以です。
ハンマー(トンカチ)部分。
釘を打ったり、革のしわをたたいて伸ばしたりします。
甲革をつり込みながら、木型にタックス(釘)をとめていくときに重宝します。
日本製は、この部分が固く丈夫で、いくら使っても凹みなどせず、平らを保つのだそうです。
確かに、写真のものも40年以上前のもので相当使い込まれておりますが、この部分は平らのまま今でも十分使える状態に見えます。
現在、国内で日本製のワニを製造や販売されている業者さんはいらっしゃるのでしょうか?
ご存じの方は是非教えていただきたいです。
shoepara掲示板>日本製のワニ(ピンサーペンチ、ラスティングピンサー)を探しています。
[関連ページ]祖父が40年以上前に靴づくりで使用していた、天然木製の木型(ラスト)「甲木切り型(甲切り型)」の紹介。
(文・写真/shoepara編集部 大嶋信之)